sissy's log

ここからは 青い空とか岬とか 見える

『コロナ後の世界を語る』の 福岡伸一氏

 

「無駄な抵抗はやめよ」
なる見出しが目に飛び込んでくる。
2020年6月配信の、分子生物学者である
福岡伸一氏の文面は静かに怒っていた。
コロナ騒動に対する声明文だ。
前回は野口晴哉氏を紹介したが、野口氏に次いで
ラディカル(根源的)なのは福岡氏であると思う。

 

4月配信分ではウイルスの概要が短く語られた。
私はアエラでそれを読んだ。以下、部分。

 

「親から子に遺伝する情報は垂直方向にしか
伝わらない。しかしウイルスのような存在が
あれば、情報は水平方向に、場合によっては
種を超えてさえ伝達しうる。
それゆえにウイルスという存在が
進化のプロセスで温存されたのだ」

 

そして6月。以下部分抜粋。
「生命としての身体は、自分自身の所有物に見えて
決してこれを自らの制御下に置くことはできない」
「長い時間軸を持って、リスクを受容しつつ
ウイルスとの動的平衡を目指すしかない。
ゆえに、私は、ウイルスを、AIやデータサイエンスで、
つまりもっとも端的なロゴスによって、
アンダーコントロールに置こうとするすべての試みに
反対する」

 

自然界の真実(ピュシス) とは厳然と在るもので、
人間の都合など考えてくれるわけもなく。
しかし、そこに作為や邪悪さは存在しない。
だから私はその中でこそ安らげる。
「無駄な抵抗はやめよ」の一文に深く頷く。
たとえこれが
どんなに世間や医薬業界からウケが悪くても。

 

「私たちはつねにピュシスに完全包囲されているのだ」
今までもコロナ後も、それは変わらない。
ロゴスの仕事は、ピュシスを記述することであり
そこに存在意義があるのだろう。 

 

全文は『コロナ後の世界を語る』朝日新書20年8月
刊行に収録されている。

 

 

 

 

 

 

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